学生による成果物
2020年度の成果物 オンライン取材記事
日本の伝統文化を後世に継承する
~株式会社くろちくの取り組み~
株式会社くろちく
昭和49年創業。「文化継承」を企業理念として掲げ、小売、飲食、ブライダル、ホテルなど7つの事業を通して、日本文化を国内だけでなく世界に発信する取り組みをしている。 株式会社くろちく倭美坐 京都の伝統を大切にし、京の伝統工芸・食文化など多角的に取り組む”株式会社くろちく”のグループ会社で、伝統工芸品・和装小物・インテリア用品等の販売事業及びその販売に関する委託業務・コンサルティング業務、直営店舗の管理運営を主の事業としている。 |
写真中央左:株式会社くろちく倭美坐 桐山様 |
今回、株式会社くろちく倭美坐 小売事業部 桐山裕樹様にインタビューをさせていただきました。(以下敬称略)
同社が企業としてどのような活動や取り組みを行っているのか、また、インターンシップを受け入れてくださっている動機や今の学生に伝えたいことを語っていただきました。
山岡:御社は企業開発・ホテル事業・ブライダル事業・小売り販売事業など色々な事業を展開していらっしゃいますね。
桐山:弊社は、5つの会社から成り立っている形にはなるのですけれども、それぞれに特徴を持たせているグループ会社です。事業理念にもあるように、「文化の継承」を根本にビジネス展開していて、伝統工芸品や雑貨の卸売販売がメインの会社です。それに付随して、小売販売業やホテル事業、ブライダル事業があります。「株式会社くろちく」と「株式会社くろちく倭美坐」が売上規模年収で言うと大きくなっています。
山岡:現在、特に力を入れていることは何ですか?
桐山:(コロナの影響で)今年に入ってから変わりすぎて、こんな経験をしたことがないので何をしていいのかわからない状態で。今まで行っていた対面での販売や卸売、小売もなかなか厳しい時代に突入している中で、今までとは違うことをしていかないとダメだというふうに切り替え始めています。当面の目標はインターネット上での広報や販売活動に力を入れて、どういう風に「くろちく」というブランドが育つのか、育たせるのか、ということですね。
山岡:コロナ禍の影響で海外の観光客が激減しているかと思いますが、どのような取り組みをしているのかお伺いしたいです。
桐山:京都にある店舗というものは「待ち」の商売ですので、京都にお客さんが来てくれることで商売が成り立っています。弊社も、店舗の売り上げの約半分がインバウンドのお客様からの売り上げで成り立っていました。でも今は売り上げの97~98%が日本人という感じです。それでも、海外のお客さんが地球から消えたわけではないですよね。なので、京都に来られない方々に僕らからアプローチできるように、海外向けのインターネット通販を立ち上げています。
文化は変化するもの。だからこそ伝え続ける。
増山:文化継承を行うにあたっての目標やゴールは何ですか?
桐山:文化継承のやり方を時代に合わせて変化させていくことが必要だと思っています。具体的な答えはないし、もし答えがあるのなら、そこで文化継承も変化も終わってしまい、企業としても消滅してしまうので、文化を次世代に伝え続けることが目標です。
藤原:なるほど。文化継承を仕事とする上で、桐山様は文化に対してどのような考えをお持ちですか?
桐山:徐々になんですけど、文化が薄れてきているような気がしますね。新しいものの方が目を引くので、どうしても蔑ろにされがちかと思います。ただ、文化は過去から現在に至った過程を考え、物事を進めていく上では非常に大事なので、僕らがどれだけの人に伝えられるか、それの表現方法として商品や雑貨を作っています。
増山:御社にとって、文化を伝えるための手段が商品なのですね。
桐山:そうですね。文化って何だと思います?僕個人としては文化というものは、ただの古いものではないと思っています。その時代によって必要なものが変わってきて、それがずっと進化し続けて今に至って。その後、今の時点で振り返ったものが文化というものだと思っています。だからこそ「文化って何?」に対して、いい答えが見つかりません。例えば、このコロナによって変化したことも5年後には文化と言っているかもしれないので。ただ、そういう風に進化して変化しているものを大事にしていきたいですし、私はそれに共感してこの会社に入りました。今この世の中、いろんな人が何を求めているのかもっと知って、僕らがそれを乗り越えられるようなものを開発していきたいと思っています。
仕事のやりがいとは?
山岡:桐山様は以前、自動車メーカーに勤務されていたとお伺いしました。御社に転職した理由はなんですか。
桐山:前職のとき、自分がこの仕事を続けられるかと考えた時に、自分の力をもう少し試せる場所がいいと思いました。自由にやりたいという気持ちが強かったのと、お客様との関係が強い仕事がしたいと思っていたので、社長などとの距離も近い中小企業の方が自分には向いていると考え、くろちくに入社しました。
藤原:中小企業は社長との距離が近いとおっしゃっていましたが、仕事のやりがいは変わりましたか?
桐山:はい。他の従業員や社長にもたくさんの意見を言ったりして、自分のやりたいことをやらせていただいています。命令されて仕事をするよりも、自由で面白く、やりがいがあり、自分には向いていると感じています。
インターンシップをなぜ行うのか?
増山:御社はインターンシップを8年前から受け入れられていますが、具体的な活動内容について教えていただきたいです。
桐山:8年前からインターンシップの受入れを開始し、私は2016年ごろから担当しています。今のコロナ禍の状況において厳しいですが、本来であれば実習や研修等があります。大体10日間の日程で、まず初日にインターンシップ生に課題を与えます。課題内容は、その時に当社が抱えている悩みを解決する方法を考えていただくことになります。座学だけでなく、同業、異業の垣根を超えた他社見学も行います。他の環境でも刺激を受けて、課題解決をしていくべきと考えているためです。インターンの最終日は大学コンソーシアム京都の方も招いてプレゼンを行います。
増山:桐山様がもし、学生に戻れるのなら、くろちくさんのインターンシップで何を学ぶことができたらいいと思いますか?
桐山:「お客様からクレームを言われること」です。クレームを言ってくださるお客様ほど、その後関係が良くなります。私は7年間、自動車メーカーに勤めているなかで、お客様に怒られることも多かったですが、怒ってくださったお客様ほど、その後、深いお付き合いができました。人と人とのつながりは会社の利益につながりますので、私はそこが一番大切だと思っています。
増山:インターンシップは受け入れにお手間がかかると思うのですが、なぜこのように学生に対して親身にプログラムを実施していらっしゃるのですか。
桐山:自分自身も十数年前までは学生であり、今の学生と同じ立場であったからからこそわかることがあります。学生の頃体験しておけばよかった、知っておけばよかったと思うことがたくさんあるんです。今の時代はインターネットを使えば、知りたいことは調べることができます。しかし、実際に体験することで知識よりも大きなモノを得ることができますし、実際に私自身でも振り返るとそう思います。特に、失敗経験で人間は成長します。若い頃の失敗が将来の役に立つことを見据え、学生の役に立てるよう、今後もこのインターンシップを続けていきたいと考えています。
【編集後記:インタビューを終えて】
株式会社くろちく様は、文化継承を理念として掲げ、文化を表現する手段として商品を生み出しています。文化継承において一番大切なことは「継承し続ける事」で、くろちく様がコロナ禍においても、マスク・エコバックの販売や海外通販など、その時々に合った柔軟な対応で、より多くの方に文化を伝えようとしていることがよく分かりました。
文化は私たち人間が歩んできた道をたどるための道しるべであり、未来を切り開くために必要なものです。私たちの今の生活は昔の人が継承したからこそ成り立っています。くろちく様の事業が担う文化継承への取り組みを次の世代が引き継いでいかなければならないと強く感じました。取材にご協力いただきました桐山様、ありがとうございました。
(山岡、藤原、増山)